なぜ妊娠中に薬を飲んではいけないのか

公開日: : 最終更新日:2016/03/16 妊娠・出産 ,

スゴ腕 産婦人科医ドクターXと ある女性の診療風景。
先生……
どっ、どうされました??
私、生理が10日も遅れてたんで「もしかして?」と思って妊娠検査薬をしてみたんです。
はい。どうでしたか??
妊娠してたんです。。。
なぜそんな暗い顔を?のぞまない妊娠なのですか?
いえ、そうではありません。妊娠はうれしいのですが、実は……実はこの2週間カゼが治らなくて、ずっと薬を飲んでいたんです。
はい。
だから…その…薬のせいでこの子に影響が出てしまうのではないかと心配で。
奇形の心配をされているのですね。
はい。
薬のせいで奇形を作ってしまうのではないかと心配される気持ちはよくわかります。しかし、ほとんどの薬にその心配はありませんから安心してください。
本当ですか?
おなかの赤ちゃんに奇形を作る作用のことを「催奇性」とか「催奇形性」といいます。また、赤ちゃんの発育や機能に悪い影響をすることを「胎児毒性」といいます。これらについては、薬が発売される前に厳重なチェックがおこなわれます。抗がん剤など一部の薬を除き、催奇性が強い危険な薬が発売されることもありません。誰でも買える市販薬についてはなおさらです。
妊娠に気づかないで薬を飲んでいたとしても、多くの場合、心配するほどのことではありません。日常的な病気の薬、たとえばカゼ薬、頭痛薬、胃薬などを通常の範囲で使用されていたのでしたら、まず問題ないことでしょう。市販薬にも危険性の高い薬はありません
実は病院で処方してもらった抗生物質も飲んでたんですけど。
病院の薬には妊娠中に禁止されている薬(妊婦禁忌)がたくさんあります。ただし、危険度のレベルは薬によってまちまちで、本当に危険度の高い薬はこれらのなかでもほんの一部です。また、服用量、服用時期によっても危険度が違ってきます。たまたま妊娠中に禁止される薬を飲んでしまったからといって、必ずしも危険性が高いわけではないのです。早まって妊娠中絶などと考えてはいけません。
実は心配で心配で夜も眠れず、堕ろした方がいいのかもしれないとか……お恥ずかしい話ですが。
もちろん、危険な薬はごく一部といっても、不必要な薬は飲まないに越したことはありません。生理が遅れていて、妊娠の可能性のあるときは、薬の安易な使用は慎むべきです。
先生、私どうしたら……
こちらで薬を処方しますので、そちらを服用してください。妊娠についても心配ありませんから、素直に喜んでいただいて大丈夫です。
ありがとうございます!でもまだ100%安心できてない自分がいるので、もう少し詳しいお話をうかがってもいいですか?
わかりました。薬がおなかの赤ちゃんにおよぼす影響は、使用時期によって違います。催奇形のうえでもっとも心配なのは、赤ちゃんの形がつくられる妊娠初期です。妊娠後期では奇形の心配はなくなりますが、赤ちゃんの発育や機能に悪い影響をする胎児毒性が問題となってきます。また、使用期間は当然、短期間のほうが影響が少ないです。
先生…またちょっと不安がぶり返してきました…
そもそも飲んでいた薬にそんな心配はないのですから大丈夫です。ただし、サプリメントや一般的な薬の中にも注意しなければならないものもありますから、よく聞いてください。
すみません。続きをお願いします。
薬の危険度は使用量にも大きく依存します。一般的には使用量が多いほど危険度が高まります。その典型的な例としてビタミンAホルモン剤があげられます。ビタミンAは妊娠中にも必要なビタミンなのですが、薬として過剰に服用するとかえって奇形の発現率が高くなることが知られています。ですから、妊娠中に薬が必要な場合は安全性を考慮し必要最少量(最小有効量)とします。
「マルチビタミン」を飲んでますけど大丈夫でしょうか?
その程度は大丈夫です。できれば「葉酸」を摂ってください。
わかりました。ほかにもありますか?
薬は口から飲む「内用薬」、注射器で体内に注入する「注射薬」、皮膚や粘膜に直接使用する「外用薬」に分かれます。内用薬と注射薬は、全身作用があるので妊娠中は慎重に用いるようにします。痛み止めの坐薬など一部の外用薬は全身作用があるので同様に注意が必要です。一方、かゆみ止めの塗り薬、痔の坐薬、目薬、点鼻薬、喘息の吸入薬など局所だけに作用する外用薬については、通常の範囲であれば妊娠中でも安全です。
花粉症の薬や点鼻薬は大丈夫ですか?
大丈夫ですが、不要な外出はしない、マスクを付ける、洗濯物は外に干さない、鼻うがいをするなどして、薬の使用は必要最少量にして下さい。
はい。
これはとても注意が必要な薬ですが、てんかんの薬では、薬の種類が多くなると奇形の発現率が高くなることが知られています。このため、できれば1種類の抗てんかん薬だけでコントロールするほうがよいとされます。てんかんに限らず、妊娠中はできるだけ薬の種類を少なくすることが基本です。
はい。それは大丈夫です。あと、●●●の漢方便秘薬は大丈夫でしょうか?
漢方薬にも飲んではいけないものがいくつかあります。代表的なものでは桂枝茯苓丸桃核承気湯などの「お血」を下す薬。それから、便秘薬などによく使われる大黄が入っているもの。これらは催奇形性の問題ではなく、流産の恐れがあるからです。(大黄は市販の便秘薬にも入っています)
また、催奇形性の報告はありませんが、八味地黄丸に含まれる附子(トリカブト)など毒性の強いものもありますので、慎重になったほうがよいでしょう。
ありがとうございました!

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