データが示す口腔と生殖の関連性
疫学研究は、歯周病が男女双方の妊孕性に悪影響を及ぼす可能性を一貫して示唆しています。特に女性では、妊娠に至るまでの期間が長くなることが報告されています。
歯周病による妊娠期間の遅延
ある研究では、歯周病の女性はそうでない女性に比べ、妊娠に至るまで平均で2ヶ月以上長くかかりました。これは、肥満が妊孕性に与える影響に匹敵します。
妊娠しにくさのリスク上昇
特定の条件下では、妊娠できない確率が大幅に上昇します。特に、ある種の歯周病菌に体が強く反応している女性は、リスクが3倍以上になるという報告もあります。
男性への影響
精子の質の低下
精子の運動率や濃度の低下との関連が報告されています。
勃起不全(ED)
全身の慢性炎症が血管機能を障害し、EDのリスクを高める可能性があります。
全身への影響:血栓のリスクについて
血栓症(心筋梗塞・脳梗塞)のリスクも上昇
歯周病による慢性的な炎症は、血管の内壁を傷つけ、血液を固まりやすくすることが知られています。これは動脈硬化を進行させ、妊活の問題だけでなく、将来的には心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気のリスクを高める可能性があります。
【重要】なぜ口腔内の問題が全身に影響するのか?
口腔内の問題が妊娠に影響するのには、主に2つの経路が考えられています。体全体に炎症が広がる「間接的炎症経路」と、細菌が直接子宮に届いてしまう「直接的微生物経路」です。
① 間接的炎症経路
歯周病巣
口腔内の慢性的な炎症の源
細菌や毒素が血流へ侵入
炎症性物質が血行性に移行
全身性の低悪性度慢性炎症
体全体が軽度の炎症状態に
子宮のベッドがフカフカじゃなくなる
ホルモンの働きや免疫が乱れて、赤ちゃんが根付きにくくなる
② 直接的微生物経路
歯周病巣
口腔内細菌のリザーバー
血行性播種
細菌が血流に乗って全身へ
子宮内膜への定着
細菌が直接子宮に到達
赤ちゃんが根づきにくい環境に
子宮内の細菌バランスを乱し、着床のじゃまをする
まとめ:歯周病が見過ごせない理由
歯周病は単なる口腔内の問題ではありません。全身に広がる慢性炎症は、男女双方の生殖能力と全身の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
♂ 男性への影響
- ■全身性の慢性炎症:体全体の健康を損ないます。
- ■血栓リスクの上昇:心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。
- ■精子の質の低下:精子の運動率や濃度が下がることがあります。
- ■勃起不全(ED):血管機能の障害から引き起こされる可能性があります。
♀ 女性への影響
- ■全身性の慢性炎症:体全体の健康を損ないます。
- ■血栓リスクの上昇:心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。
- ■ホルモンバランスの攪乱:ホルモンの正常な働きが妨げられます。
- ■子宮内環境の悪化:着床しにくい状態になることがあります。
これらのリスクは、妊活中の方だけでなく、すべての方の長期的な健康に関わる重要な問題です。口腔ケアは、未来の家族計画とご自身の健康を守るための第一歩です。